ORGANIC FIELD Voice #01

ORGANIC FIELD Voice 01
ORGANIC FIELD Voice 01

現代を生きる人々の道具としての衣服という視点でニットウエアを提案するCFCLの代表兼クリエイティブディレクター、高橋悠介氏。インドに12年間駐在し、ORGANIC FIELDの根幹を担ってきたORGANIC FIELD室 髙森俊滋。
ORGANIC FIELDを、共に世界に広めていくことへの想いを語りました。

コットンには天然繊維でしか
表現できない良さがある。

髙森サステナビリティはあえて謳わないというスタイルでありながら、日本のアパレルブランドとして初めてBコープ認証を取得され、デザイン性だけでなくサプライチェーンの透明性にも力を入れておられるCFCLに、私たちも強く共感しています。ORGANIC FIELD(以下、オーガニックフィールド)を採用していただいたことをきっかけに、対談という機会を設けさせていただきました。

CFCLといえば、再生ポリエステルをメインに使用されていると思いますが、コットンを採用し始めたきっかけはあったのでしょうか?

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高橋CFCLのものづくりの根幹にあるのは、コンピュータープログラミングニットの技術を使って、都市生活のあらゆるシーンに対応する品格を持つ、洗練された服を作ること。しかし、メインで使用している再生ポリエステルとニットの掛け合わせだけでは、デザイン面と機能面で制約が生じるため、ポリエステルだけでは生み出せないテクスチャーや着心地を、他の素材で拡張する必要がありました。

コットンでしか表現できない良さがあるものの、ニットにするとどうしてもカジュアルに見えてしまう。それをいかに上品に仕上げるかが、CFCLにとってコットンを使用する上での一番の課題でした。

2年ほど探しても納得できる素材が見つからず、結果的に無いのなら開発してみようと企画し、再生ポリエステルとコットンをミックスし、ハリ感があり涼しげで、品格もある糸を開発しました。

髙森それであのオリジナルの糸が開発されたんですね。

LCA算出における最適解は、
“畑から”

髙森その中で、オーガニックフィールドを採用いただいた経緯は何だったのでしょうか?

高橋CFCLを創業する直前の2018~19年は、脱プラスチックの潮流の高まりからオーガニックコットンのニーズが高く、コットンに対するサステナビリティの取り組みは化学繊維よりも進んでいました。

実際に髙森さんからオーガニックフィールドの取り組みの内容や目的についてお話を伺い、素晴らしいプロジェクトだと思いました。通常、LCA(ライフサイクルアセスメント)算出はデータベースを使用する方法が一般的ですが、CFCLではなるべく工場を特定し、そこで使用している電力や工程を確認しながら実績ベースで測定しています。その中で、ウールやコットンの原料は基本的に一ヶ所に集約されてから流通するため、トレーサビリティが確保できない危険性を強く感じていました。

特にオーガニックコットンはたびたび偽装問題も起こっていたので、種の選定や畑の土壌作りからの取り組みは、手間はかかるけれども最良だと思いました。お米や野菜もそうですが、農家さんの顔が見えるものは流通経路の透明性も高く、そこに付加価値があると思うので、アパレルにおいても取り入れられるとよいと考えています。

オーガニック認証の有無だけで
「使用しない」という選択にはならない。

髙森オーガニックフィールドを使用いただく中で、先日コットン・イン・コンバージョン(以下、イン・コンバージョン)についてのリリースを配信いただきました。イン・コンバージョンという言葉自体ご存知なかった方も多いのではないかと思うのですが、イン・コンバージョンに対する認識や考え方に変化はありましたか?

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高橋そうですね。私もそうでしたが、社内でもイン・コンバージョンがほとんど認知されていませんでした。今回のリリース配信にあたり、オーガニックコットンに移行するまでの約3年間が、農家にとって大きな障壁になっているという事実を知りました。その上で、「オーガニックコットンではないことを理由に選択肢から外さない方が望ましい」と社内で明確な方向性を定めるきっかけになりました。

髙森イン・コンバージョンはオーガニック認証が取れないということに対して、社内で反対意見などはなかったですか?

高橋CFCLは、2030年までに認証素材使用比率100%を達成するという目標を掲げていますが、ファーストコレクションから変わらずクリエイションの軸にあるのは、ニットを使って品格のあるものを作るということ。そのために、まずは良いと思う素材を使う。

その次に、それが認証素材であるとなお良いという考え方です。イン・コンバージョンはOCS認証は取れますし、生産背景も含めてオーガニック認証の有無だけで「使用しない」という選択にはならなかったですね。

我々が一番嬉しいのは、トレーサビリティが確保され、安価な認証素材の選択肢が世の中にたくさん増えていくことです。その上でポイントとなるのが、CFCLはシーズンが新しくなっても、多くの素材を継続して使用しています。そうすることで、サプライヤーとの関係性が構築されていくので、元々はバージン素材を使用していたけれども、それと置き換えられるリサイクル素材や認証素材を開発しませんか?という話が自然とできるようになります。

ニーズの存在が業界全体に広がれば、メーカーさんが競争して開発が進み、バリエーションが増えて手ごろな価格のものが出て市場がさらに広がる。CFCLの規模はまだ小さいですが、再生ポリエステルのマーケットの拡大に確実に貢献していると私は思っていますし、同じことがコットンにもできると思っています。

* OCS(Organic Content Standard)認証:オーガニック繊維を含む製品の生産・製造に対する自主基準に基づいた国際的な第三者認証

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ブランドには、生産者とコンシューマーをつなぐ
役割がある。

髙森本来のオーガニックフィールドの目的は、コットンを販売することではなくオーガニック畑を広げていくことです。しかし、今の日本ではイン・コンバージョンの認知度は低く、「オーガニックではないもの」として完全に遮断されてしまっており、販路が広がらないことが目下の課題です。

このプロジェクトに参加するのを待っているコットン農家がインドにはまだたくさんいます。CFCLとともに何かできることはありますか?

高橋我々のようなブランドには、ファッション業界の長いサプライチェーンの川中・川上とコンシューマーをつなぐメディアとしての機能があると思っています。BtoBビジネスよりもコンシューマーに対する間口が広く、それがブランドの数だけ無数にある。その伝達/拡散力を上手く活用すればいいのではないでしょうか。

私が今回のようなインタビューや取材に応じることもその一つです。社会に対してベネフィットをもたらすプロジェクトだと共感したら、コンシューマーに対してアナウンスしたり、エデュケートする役割を担いたいと考えています。そういう取り組み一つひとつが業界紙などで流れていくと、周知につながっていくのではないかと思いますね。

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ORGANIC FIELDのコットンを使用した商品

VOL.9 Collection / CFCL

自らの選択がその産業の将来を決める。

髙森インドの現場に長く携わり、実際に自分の目で見てきた農家の実情や労働環境など、綿花栽培の背景を世界中に伝えていきたい。そうすれば、何かが変わるのではないかと思っています。

高橋消費者の関心をどれだけ集められるかがとても大事だと思います。例えば、私は5歳の娘と一緒に養蚕農家を回り、シルクはどんな風にできているのかを見せたり、この服はペットボトルから、これは羊から、これはコットンからと、繊維の背景の話を伝えるようにしています。そうすることで、娘も興味を持ってくれるようになりました。コットンを摘んでくれている人たちの生活を見せてあげることは、記憶に残り、心に刻まれると思います。

最近カカオが高騰しているという話を聞きますが、多くのカカオ農家で働いているのは、1日2ドル未満の賃金で、チョコレートを食べたこともない人たちだということを、チョコレートが好きな娘にもきちんと教えていくことが大事なのだと思います。

そしてSNSがこれだけ普及すると、個人の発信に正義感があり筋が通った太いメッセージであれば、拡散するスピードは以前に比べると圧倒的に早い。プラスチックストローがウミガメの鼻に刺さっている映像が、世界を変えたりする時代です。自らの選択がその産業の将来を決めていくということを少しずつみんなが理解し始めていると思うし、私もそう信じて活動しています。

髙森私もそう信じて、オーガニックフィールドとイン・コンバージョンを広める活動をしていきたいと思います。

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オーガニックフィールドが
世界のファッション業界の
未来を変える。

高橋日々たくさんの素材を見ていて、絶対になくならないものの一つとしてコットンがあると改めて感じています。あたたかみや吸水性があり、環境でいろいろ変化する機能性や面白さがある。オーガニックフィールドの畑を拡張する目的の先にあるのは、コットンへの取り組みが世界のファッション業界の未来を変えていく可能性だと思います。そこを目指していくと、手前の地道な活動を頑張れそうな気がしてきますよね。

髙森コットンの可能性を信じ、共に未来を創っていきたいですね。
持続可能なファッションの実現に向けて、こうした取り組みがさらに広がることを期待して、日々一歩ずつ確実に前進したいと思います。

ORGANIC FIELD Voice 01-株式会社CFCL 高橋 悠介
高橋 悠介 Yusuke Takahashi
株式会社CFCL
代表兼クリエイティブディレクター

1985年生まれ、東京都出身。
文化ファッション大学院大学卒業後、2010年株式会社三宅デザイン事務所入社。2013年にISSEY MIYAKE MENのデザイナーに就任し、6年半にわたりチームを率いる。2020年同社を退社後、株式会社CFCLを設立。2021年 第39回毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞及びFASHION PRIZE OF TOKYO 2022を受賞。2022年よりパリ・ファッションウィークに参加。2024年、Vogue Business 100 Innovators: Sustainability thought leadersの1人に選出された。

ORGANIC FIELD Voice 01-スタイレム瀧定大阪株式会社 髙森 俊滋
髙森 俊滋 Shunji Takamori
スタイレム瀧定大阪株式会社
ORGANIC FIELD室 室長

1976年生まれ、大阪出身。
1999年、瀧定大阪(現・スタイレム瀧定大阪)に入社。13年間にわたり、日本国内を中心にテキスタイル事業の営業に従事。2012年のインド現地法人設立を機に現地駐在を開始し、2017年に同法人の代表取締役社長に就任。2024年より現職。

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